『手仕事の日本(抜粋)』柳宗悦

 安藝国《あきのくに》の広島は浅野氏が城を構えしところ、山陽第一の都であります。つい先日までかつて大名であった九十余歳の老侯が住んでおられました。物資も豊《ゆたか》で富んだ県であります。しかし昔と違って今は工よりも商が盛《さかん》なためか、作るよりも使う側に立つためか、この都で出来る特色あるものは、少いように見受けます。
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 この国が持つ特色ある手仕事としては、何よりも「山繭織《やままいおり》」を挙げねばなりません。可部《かべ》地方のもので黄と褐との色合いを持つ織物であります。一時は着尺にも夜具地にも用途が広く、相当に栄えた仕事でありましたが、いつしか流行におくれ、今は絶え絶えになりました。しかし一見特色の明かなものでありますしまた美しい布でありますから、本来なら流行などに左右されないでよいはずであります。もし郷土の品に誇りを誰も持つようになったら、必ずや勢いを得てくるでありましょう。いつかきっと見直す人が出て再び立ち上ることと思います。

『手仕事の日本』柳宗悦 <青空文庫>
※初版(靖文社)1948年、岩波文庫版 1985年

民藝の日本:柳宗悦『手仕事の日本』を旅する (日本民藝館監修)